映画「沈まぬ太陽」 矜持とは?勝ちとは?
映画「沈まぬ太陽」を見に行った。
映画の日だったということや,ちょうどマイコーの「THIS IS IT」が上映されているということもあり,映画館はいつになく大入りだった。
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この記事にみるように,やはり「THIS IS IT」は相当人気があるようで,満員だった。
しかし,「沈まぬ太陽」も朝からの上映だったにも関わらず満員だった。
席に着くと,いつもと違う雰囲気であることに気がついた。観客の年齢層が自分よりも相当上なのだ。このような客層で映画を見たのは恐らく初めてだったと思う。
大人はいい。エンドロールが終わるまで席についている。それとも,映画を見終わって呆然としていただけだったのだろうか。
上映は途中で10分の休憩をはさみ約3時間半ほど。これまでの人生で,ここまで長い映画を見たのも初めてだった。話の内容も重く,精神的にも肉体的にも真剣に向き合う必要がある映画だと感じた。
それでも渡辺謙さんをはじめ役者さんたちの演技がすばらしく,向き合うモチベーションが最後まで落ちなかった。
自分としては,映画の中でキーワードが2つあったと思う。
一つは「矜持」という言葉だ。「矜持」とは,辞書を引くと「自負。プライド。」とある。
渡辺謙さん扮する主人公の恩地は労働組合のリーダーだったが,それが元でパキスタンに左遷されてしまう。それでも,会社を辞めるわけにはいかない・・・自分の矜持が許さない,と言う。その後も家族と離れてイラン,ケニアと飛ばされ,ケニアではついにノイローゼ状態に。
恩地が言うこの「矜持」ということが実際には何を指しているか,自分には正直わからない。しかし,これが辞書の意味通りだったとしたら,妻や子供と長年離れてまで会社を辞めずに自らの「矜持」を守るか?
答えはノーだ。会社は辞めて,ジャーナリストや作家になるなど,とにかく空の安全確保を世の中に訴える方法を考えるだろう。そうすることで妻や子供と離れず,さらに「矜持」も守ろうとするだろう。
しかし映画では,恩地の選択は正しかったかもしれない。それは日本に戻ってきて,「機付き整備士」の制度を実現することができたからだ。これは耐えた末に得た,一つの勝利だと思う。
もう一つは「負け」という言葉だ。
終盤の恩地と行天のやりとりで,恩地が「お前はさびしい男になったな」と言うと行天は「負けたのはお前だ」と答える。
では行天が言う「勝ち」とは何か。恐らくは金,地位,名誉をどれだけ得たかという事だろう。その意味では行天は確かに勝ったと言えるだろう。
しかし恩地にしてみれば,またアフリカに飛ばされることにはなったものの,「機付き整備士」の制度を実現できたので勝ったと言えるだろう。
どちらが本当の「勝ち」かは分からないが,金や地位や名誉を「勝ち」とする男に魅力がないという事ははっきり感じた。
行天さんは一見、得ているようで、失っているように見えました。逆に恩地さんはどんどん失っているようで、得ているような。
返信削除どう生きていくのか、という生き方や生きる意味、自分の価値観、そういったものを恩地さんは見つけ、得ていっているように見えました。