2013年9月16日月曜日

日経のトリチウムの解説記事が素晴らしい。「国民がフェアな見方をできるように」という気合を感じる。

日経13.09.08朝 トリチウム除去難しく

…「アルプス」と呼ぶ放射性物質の新しい除去装置で汚染水を浄化し、海に流すのが「唯一の抜本策」(政府関係者)…

ただ、トリチウムはどうしても取り除けない。水の分子に取り込まれる形で存在するからだ…

トリチウムと水素を分離処理するには、特殊な設備がいる。トリチウムは水素と沸点がわずかに違う。水素の零下253度に対しトリチウムは零下248度。両者を冷やしてから徐々に暖めていくと、水素のほうが早く沸騰する。触媒や電気分解を使う方法もある。

こうした性質を利用した処理施設が日本原子力研究開発機構の原子力施設にある。新型転換炉「ふげん」だ。ふげんはすでに廃炉になったが、1日30キログラムのトリチウム水を処理する小型装置があった。装置の費用は7億円、処理費は1トンあたり2千万円だった。ふげんのトリチウム水は福島第一より10万倍濃い。それでも福島第1の汚染水を処理するとなると、装置規模はふげんの1〜2万倍は必要で、単純計算すると装置コストが約10兆円、汚染水の処理費用に8兆円以上かかる…

実は通常の原子力施設でもトリチウムを含む排水が海に出てしまう…

福島第1の汚染水に含まれるトリチウムの量は約500テラベクレル。東電が事故前に定めた放出基準だと全量を流すのに22年以上かかる。六ケ所村の再処理工場での上限を準用すれば約10日で放出可能だ。

日本原燃によると、年1万8千テラベクレルを海洋放出し地元の漁業関係者が毎日漁に出て海産物を食べ、さらに放水口付近に1年間居続けたとしても、被曝(ひばく)線量は年0.022ミリシーベルト。国内で自然界から浴びる年1ミリシーベルトを下回るという…

トリチウムが生物に与える影響について「基準以下であれば科学的に影響は認められない」と茨城大学の田内広教授も説明する。人間が飲み込んでも「ストロンチウムのように骨に蓄積することはない」といい、水と一緒にほとんどが比較的早く排出される…

原子力規制委員会の田中俊一委員長…「(トリチウム水は)希釈なりをして放出することになると思う。高濃度の汚染水を大量にためておく方がリスクが大きい」と述べた。

(川合智之)

この川合智之氏の記事は素晴らしい。「国民がトリチウムについてフェアな見方をできるように」という気合を感じるから。渾身の記事じゃないかと思う。

引用が長くなったので整理しよう。

トリチウムは
  1. 水分子に取り込まれていて除去が難しい
  2. 除去できないわけではないが、非現実的なコストがかかる
  3. 通常の原子力施設でもトリチウムは放出されている
  4. F1には500テラベクレルのトリチウム汚染水があるが、年に1万8千テラベクレルを放出して厳しい条件にしても、被ばく線量は年1ミリシーベルトを下回るので問題無い
  5. トリチウムは体内に入っても水と一緒に排出される
  6. 放出せずに高濃度でためておく方がリスクが高い
ということらしい。

1と2と5はそうなんだろう。

3は青山繁晴氏も言ってた。原発大国のフランスも大量に流してるはず。もし日本がトリチウムを流すとしても、この事実を知っていればしっかり反論できる。

4は微妙。放水口付近にいたり、放水口付近の海産物を食べるという結構厳しい条件なので信ぴょう性はなくもないかもしれないけれど、どうだか。。。

とはいえ、6の「放出せずに高濃度でためておく方がリスクが高い」というのは確かだと思う。

放出せずに大量にためておくことは、F1の作業員の方々や福島を危険にさらすことになると思う。

できるだけ希釈して、できるだけゆっくり、海に放出するしかないか…

やっぱり、新しい原発はつくらない方がいいと思う。事故の確率が低いといっても、一度事故が起これば大変な危険とコストを伴う。言ってみればギャンブルみたいなもんだ。

少ないコストで大量のエネルギーを得るか、多いコストでそこそこのエネルギーを得るか。難しいところだけど、エネルギーは国家の基礎であるということを考えれば、ギャンブルはできないと思うんだ。